3つのR
台所に入っていってカップを水に漬ける私の耳には、ダイニングで言い合う龍さんと姉の声が聞こえてきていた。姉は、ちょっと君!私が先に聞くんだから~!と叫んでいて、龍さんは、いやいやそんな、野郎の外見なんかよりも誘いを受けたかが大事でしょ!?てブーブー言っている。
そうか、と私は一人でぼんやりと考えた。姉と龍さんは似ているんだ。だから、あんなにすっと受け入れられたんだな、私。
ぎゃあぎゃあと言い合う二人の前にもう一度出て行くと、二人とも今度はぴたっと口をつぐんだ。
私は首を傾げて二人を見る。
「あれ?どうしたの?」
「騒いだら教えてくれないなら黙ろうかと思って」
「右に同じ」
うーん、考え方も似ているんだな、この人達は。そう思ったら笑えた。私はテーブルにも一度ついて、ちゃんと返事をしてあげることにする。
「お誘いには乗ってないよ。だって今日は龍さんが来るって聞いてたもの」
「え、今日だったの?」
姉が驚いたので、うん、朝のゴミ拾いで誘われたの、と答える。
龍さんが指をパチンと鳴らして眉毛をきゅっと上げた。
「おお、俺ってば未来が読めるのか!さすがだ!じゃあ、今のうちにもうちょっと杭を打ち込んでおこうかな」