3つのR
え?私と姉は二人揃って首を傾げる。龍さんはニヤニヤしたまま(爽やかな笑顔とは到底言えない、意地悪そうな顔をしていた)自分のボディバックを探り、中から銀色の薄い携帯電話を取り出した。
「これ、ジュンコさんにあげるよ」
「はい?」
彼が手渡す薄いケータイ電話を私はとりあえず受け取ってから、ぽかんとして見上げた。
「だってジュンコさんケータイもってないって言ってたでしょ、河川敷の散歩の時」
「え、そんなこと言ったっけ?」
「うん」
龍さんは頷いてまた椅子に座る。
「店から川原へいく途中で、携帯もないから時間がわからないって呟いてたでしょ。それで、俺が時間を教えた」
・・・そんなことがあったのかしら?私は悩んだけど、あったのだろう。その後の犬と駆け回って疲れて倒れたことしか覚えてない。
「ま、とにかくそうなんだよ。引きこもり生活だって言ってたし、携帯を今持ってないのでなくて契約してないんだろうなって思ったわけ。それでね、俺の今は使ってない機種のを―――――――」
はい、そう言って再度龍さんは微笑む。・・・ええと・・・どうしたらいいのかしら。私はちょっと困って姉を見た。すると彼女はひゅっと肩を竦める。好きにしたら?そういう意味なのだろうと解釈して、ますます困った。