3つのR
「阿達さん」
「え、は、はい?」
私が見上げると、徳井さんは苦笑を浮かべて会釈をした。
「またの機会に。今日は、失礼します」
「あ、あの、はい。さようなら」
クリちゃんが舌を出したまま名残惜しそうに振り返る。龍さんがニコニコと笑ったままで立ち上がって、彼女に手を振った。
「またな~」
「クリちゃん、またね」
私も並んで手を振る。
最後にもう一度会釈をして、徳井さんはクリちゃんを連れて歩いて行った。
「マジで可愛いな。子供はなんだって可愛いと思うけど、犬は格別」
まだ遠ざかる徳井さんとクリちゃんを見詰めながら、龍さんがぼそっと言う。
私は背の高い彼を見上げて覗き込むようにした。
「龍さんも飼ったらいいじゃないですか?」
「・・・俺のアパートはペット禁止だからね~。一人暮らしでよく外出するから、あまり構ってやれねーし」
「あ、そうか。ペットの方が寂しいかな、それでは」