3つのR


 龍さんが眉間の皺をといて片方の眉毛をひゅっと上げた。

 ・・・限界。


「困るんですうううううううううう~!!」

 うわーん、何なのよー、もう、もう、もう!!

 じんわりと涙が浮かんだけれど、顔を膝の上に沈めて隠す。おいおいと泣き喚きたい気分だ。どうして私はこんな公開処刑のような目に?知らないんです、判らないんです、そんなこと聞かないでー!

 色々叫んでいたけれど、それは勿論頭の中での話だ。実際にはただ黙って殻に閉じこもってしまっただけだった。

 しばらく間があったけど、ぽんぽん、と龍さんの手が私の頭に触れる。

「・・・すみませーん。勝手に閉店すんのやめて貰えますかー?」

 そんな声まで聞こえる。

 今日は朝から姉が見張るから、ちょっとだけど化粧もしていたのだった。それもきっと台無しになってるだろう。目元なんかパンダかもしれない。古いマスカラだから、ウォータープルーフなんてもう関係ないような気がする。

「龍さんが困らせるからでしょー!」

 顔を膝に沈めたままで、私は小さな声で叫んだ。

「うん。でも何で困るんだよ。自分の気持ちが判らねーの?」

「わ、わ、判らないんです!」

「・・・うーん、そうか。俺もまだまだだなあ~・・・。ペースを人にあわせるからやっぱりダメなのかな。ジュンコさんに合わせてたら、確かに時間はかかるよな~・・・」


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