3つのR
7、夏、過去からのサヨナラ


 自分がまさか、もう一度男性とお付き合いすることになるとは思ってなかった。


 学生の時だって、ただ流されるように生きていて、たまたま私に声をかけてくれた人が好きになり、それで楽しく幸せで過ごしてきたのだ。

 自分は決して恋愛体質ではないと知っていたし、異性に対しての興味も周囲の女の子たちに比べたら少なかったと思う。

 皆が、彼氏と手を繋いだり、キスをしたり、デートに行ったりすることに興味を持って、教室の隅で顔を赤くしてきゃあきゃあ言っているのも、可愛いなあとは思えど一緒にはしゃぎたいとは思わなかった。

 他人事みたいだったのだ、いつでも。

 同じように、その彼氏に好かれたいと思うからって小さな爪にマニキュアを塗ったり、色つきのリップクリームを買ってみたり、いい匂いのする香り袋を鞄の中にいれてみたり、そういうことも、へえ、と思って眺めているだけだったのだ。

 そんな私でも、年頃になった時、俺に任せてとぐいぐいと引っ張ってくれる男性が相手に現れた。そしてその彼が君の世話は俺がする、と言ってくれて、友達よりも早く花嫁になることになったんだった。

 一度は結婚出来た、それは失敗してしまったけれど、それでも私も結婚が出来たんだ、そう思って、何だか一人前の仕事をしたような気になっていたころもあったけれど、元夫との生活をやめて実家に戻ってみても、私にはそもそも、男の人は必要ないかもしれないなんて考えていたほどだった。





< 153 / 258 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop