3つのR


 高田君が、少しばかり身を屈めて小さな声で言った。

「ちょっと、席外せない?ここでは話しにくい」

「あ、そうよね」

 私は頷いて自席を出る。

 何せ輝くばかりの美男子なのだ。私のテーブルを通る女性達が、そわそわと彼を見ていくのが判った。女性が多い昼の部のパーティーで、彼は目立ちすぎているのだろう。大学時代の人間しか彼のことは知らないわけだし。何だ何だ、あの美形は!と思ってそうな視線をアチコチから感じた。

 私とテーブル近くで話しこんでいたら、皆何事かと思うだろう。無駄に目立つのは勘弁願いたい。

 席を立つには丁度食事奪取戦で込み合っている今がチャンスなのはよく判った。

 昔も綺麗な男性ではあったけれど、ここまで目立たなかったと思う。ただやたらと外見が整っている男の子、程度だったはず。どちらかと言えば地味な印象まである。それが今、30代になった高田君は、前よりも存在感が増している。その理由は年齢を重ねたってだけではないはず――――――――――

 私はそっと移動する彼の後ろを追いながら、ピンときた。


 手に注目―――――――特に、左手。

 そこにキラリと光るリングを発見して、つい私は口元を綻ばせた。

 会場を出てすぐのソファーまで彼は私を誘導して、改めて会釈をした。

「潤さん、ごめんね呼び出して」

「ううん、いいの。高田君は来てるだろうとは思ったんだけど、判らなくて。どこのテーブルにいるの?」


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