3つのR
言いよどんだ私の後を引き取って高田君は静かに聞く。私は頷いた。
「そう、まだあの保険会社です。俺は去年本社に異動して、もう営業はしてないんですけど。あいつは頑張ってますよ、営業のままで」
あら、異動――――――――ってことは、彼は元夫から離れたのだな、そう判った。
結婚している間、夫はよく言ってたものだ。この美形の幼馴染について、あいつは営業向きじゃないのになんだっていつまでもひっついてくるんだ、って。
あいつはまだ頑張ってますよ、その言葉に心が揺れた。
私はちょっと懐かしい気持ちになって言う。
「・・・また倒れなきゃいいけど」
高田君が、しばらく黙った。その間、私は視線を感じていた。彼の、この静かな視線も懐かしいものだった。当時は怖かったそれが、今では何でもないってことに驚いてもいた。
高田君の静かな声が聞こえた。
「孝太にも、付き合いだした女性がいます。今のあいつはちゃんと仕事もセーブして、家にも帰ってる。・・・大丈夫ですよ」
私はパッと顔を上げた。
高田君と今日会えば、彼の、元夫のその後を聞けるだろうって思っていたのだ。彼は再婚しているのだろうか、それともまだ一人でいるのだろうか、どっちにしろその現状を聞いた時、私は動揺しないだろうかって。
私は一体どういう反応をするのだろうか・・・そう思っていた。喜ぶか、傷付くか、自分でも予測が出来なかった。
電車の中でつい色々考えてしまって、ちょっとうんざりもしていたのだった。
だけど――――――――――