3つのR
車で3時間ほど北に上がったところにある高原で、私は緑の中で風に吹かれている。
山の上から吹き降りてきた風はそのままで熱い空気を払って、更に下の街へと降りていく。草原で、背の高い草っぱらにいて、さわさわと緑が揺れている音を聞いていた。
空は高く、青く光って、遠くの町の上で巨大な入道雲が伸びている。
太陽は熱かったけれど風が涼しいので、そこに座っていることは全然苦じゃなかった。
「やっぱり涼しいな~」
隣で龍さんがそう言って寝転んでいる。両腕を後ろにもっていって頭の下に敷き、座る私を見上げて笑った。
「ちょっとはマシになった?」
「うん、もう大丈夫」
私も笑顔を作る。大きく視界が開けるこの場所にいて、強い風に緑と一緒に吹かれていたら、気持ち悪さはどこかに行ってしまったようだった。
単純に言うと、私は車酔いをしたのだった。
免許を持っていない家族の中で子供時代を過ごし、結婚相手はいつでも忙しく、二人で車で遠出をしたことなど数えるほどしかなかった。
現在姉は免許も車も持っているけれど、姉の車に乗るのはいつでも夜間救急に行くときだけ。病院まではそんな距離もないし、元々倒れている時に乗っている。
要するに私は車という乗り物に慣れていない虚弱体質なわけで、龍さんが迎えに来てくれてからずっと乗っていた車で、酔ってしまったのだった。
最初ははしゃいでたので大丈夫だったのが、トンネルに入るからと窓をしめた辺りから、急に。