3つのR
「虎は表面はヘラヘラして軽いノリだけど、潜在的にはかなり怖い男だよ。去年うちのバイトの子と付き合いだしてから、えらく柔らかくなったけどねえ」
愛は偉大だぜ、ほんと!そう言って龍さんが私を見上げてウィンクをする。彼もこの高原で大いにリラックスしているようだった。くれる笑顔が、いつもよりも数倍優しい気がする。
「虎に龍・・・何だか名前まで迫力ある方が多いんですね」
私がそう言うと、彼はにやりと笑った。
「そんなことねーぞ。山神の決まりにのっとって虎って呼んでるけど、あいつの本名は虎に太郎ってつけてコタロウだ。外見も細くて色白で狐目だから、初対面では優男風だしな~」
そ、そうなんだ。一度も見たことがないけれど、是非一度はお会いしたい。私はこっそりとそう思った。それにしてもコタロウか・・・ちょっと可愛いかも。
龍さんが話す勤め先の話は面白い。だけど私には想像もつかない人達が出てきて、ちょっと驚くことが多いのも事実だ。
そんな濃い人達に囲まれて、確かに龍さんは楽しそうに仕事をしているらしい。それはかなり羨ましい。
風が強く吹いて、私達の髪をかきまぜる。龍さんの綺麗な茶色の髪に緑がついていて、それを私は手でそっと取った。
龍さんは目を閉じて口元を緩ませていた。
「・・・ああ、落ち着く。あんたとこうしてるの、俺好きだなあ~・・・」
強い風の中で低い声で呟く。それは私の耳にちゃんと届いて、心臓までを駆け下りていく。
照れたけど、彼は目を閉じていたから私はそのままで龍さんの寝顔を見詰めていた。
心の中でこっそりと呟く。
私は・・・あなたといると、ドキドキしっぱなしです。