3つのR
可愛い夫妻に手を振られて、私は龍さんのあとに続いてペンションの奥へ。
ここは離れが1つあって、あとは2階に3部屋あるらしい。主に夏の避暑と秋の紅葉目当ての場所ですね、とペンションの主人が言っていたと龍さんから聞いた。
で、今回は平日で泊り客が私達だけらしいので、離れをどうぞってなったらしい。離れといっても廊下で繋がっていて、本館との間にお風呂場があるからそういうだけみたいだった。
「あら、可愛い」
8畳ほどの部屋は壁紙が卵色で、シーツやタオルやカーテンなどはオレンジか茶色でまとめられていた。大きな窓とライティングデスクが一つ、シングルのベッドが二つ。窓の向こうには白樺の林とその奥の森や山が見える。
とても明るくていい雰囲気の部屋だと思った。
もう夕日の時間で、夏の一日が暮れかかっていた。大きな窓の向こう、山の端から真っ赤な空が覗いている。
「旅行なんて久しぶりだな~。ちょっと休憩・・・」
龍さんがそういいながらベッドに転がった。私はぼうっとしながら夕日を見ていた。
こんなダイナミックな景色を見たのは何年ぶりだろう・・・。ずっと引きこもっていて、誰かとこんな旅行に出るだなんて考えたこともなかったのだ。
山が燃えている。黒々とした森の向こうで、空だけがやたらと生命力を見せ付けていた。紫や赤やピンク、それに黄色や群青まで混じって、外の世界は色鮮やかにどんどん変化していった。
暫くそのままで、窓の外を見ていた。
そう言えば後ろが静かだわ、と思ってようやく振り返ると、シングルのベッドでは小さそうな体の龍さん。丸まって、枕を抱きかかえて目を閉じている。枕を抱きしめているのがその体の大きさに似合わずに笑いそうになったけれど、疲れているのかな、と思って口を閉じた。