3つのR


 ・・・ドキドキしてる。耳の中で自分の鼓動が大きく跳ねていた。

 さっきの龍さん・・・怖かった。

「ごめん」

 胸を押さえて寝転んだままでいたら、隣に寝そべった龍さんからそう聞こえた。

 私はそろそろと起き上がる。

 ・・・何、一体さっき、何が・・・。

「・・・あの、大丈夫?」

 龍さんは私に背中を向けて転がっていた。うん、と小さく呟く声が聞こえる。

「ほんと、悪い。ちょっと寝起きがやばかったんだ。・・・真っ暗で。誰もいなくて。一瞬どこか判らなくて」

 背中を向けているから、彼がどういう顔をしているかが判らない。私はベッドの上に座りなおして、そっと彼の背中に手を伸ばした。

 指で触れるとビクリと動く。

 ど、どうしよう・・・。触らない方がいいのかな。一人になりたいのかな。一瞬躊躇したけれど、とにかくよく判らないままでは嫌だった。

「・・・暗闇が、怖いの?」

 小さな声で聞くと、暫く間を空けてから彼は頷いた。

 ・・・暗闇が、怖い。私が部屋の電気を消して出て行ったから、目が覚めた彼は恐慌をきたしたらしい。そこに私が戻ってきた、そういうことなのかな。

 物凄く申し訳ない気分になって、私は彼の背中をさすりながら言った。

「あの、ごめんね。よく寝てるみたいだったから・・・明るいのが邪魔だと思って・・・ライト、つけないで行ったの」

「うん、ジュンコさんは悪くないよ。俺が、ちょっとね・・・」


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