3つのR


 夏の高原は虫の声もあまりせず、静かな夜だった。

 半月が遠くの空に浮かんでいる。

 ウッドデッキに置かれたテーブルとベンチで、私達は満腹の状態でだれきっていた。

「・・・ああ、ほんと、よく食べた」

 私がそう呟くと、隣で龍さんがうんと頷く。

「俺も。人のご飯食べたのかなり久しぶりかも。美味かったな~・・・。ここ、あの料理があるんならもうちょっと料金あげてもいいと思う」

 その商売人発言に笑ってしまって、私は龍さんを見る。

 彼は目を細めて壁に背を預けて座り、風に揺れる草花を見ているらしかった。

「ここは・・・」

 つい言いかけて、私は言葉を飲み込む。小さな声だったけど龍さんは気付いたらしい。ちらりと私を見て、何?と聞く。

「いえ、何にも」

「・・・何だよ、言って」

「何もないです」

 龍さんが本格的に体を起こして私に向き直った。目が笑っていない。私は簡単にビビッて、仰け反った。

「言えっつーの」

 彼から心持体を離しながら、私は恐る恐る答えた。

「あのっ・・・あの、ここは・・・暗闇だけど、怖くないのかなって」


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