3つのR
ヘタレな私はすぐに言ってしまって、そして、即行で後悔する。彼が意表をつかれた顔をしたからだ。
私は慌てて両手をブンブン振った。
「いいですいいです!ちょっと・・・思っただけだから」
折角いい雰囲気でのんびりしていたのに、何聞いてるのよ私!そう思って自分に腹が立った。
だけど、龍さんは苦笑して眉毛を下げる。
「―――――――夕食前の、よっぽど怖かったんだな。ほんと悪かった。原因は俺の子供時代なんだ。あんまり聞いて楽しい話じゃないから、やめてたんだけど」
子供時代?
私は驚いて振りまくっていた両手を止めた。
まさかそんな話が出てくるとは思わなかったのだ。龍さんは笑っているけど、何気に悲しそうな雰囲気が漂っている。・・・私、聞かない方がいいのだろうか。
一瞬の躊躇。
だけど、暗い夜の中、ウッドデッキの木製のベンチに座る龍さんは、何とも儚く思えてしまったのだ。下手したら、消えそうなくらい。
こんな大きな男の人が、何かに耐えている。そんな感じが、私をハッとさせる。
「・・・子供の時、辛かったの?」
気がついたら、そう聞いていた。
彼は目の前から遠くの山に向かって広がる森の闇を見ているようだった。そのぼーっとした感じのままで口を開く。