3つのR
9、晩夏、龍の発散方法
「やっぱり、お二人は付き合ってるんですね」
そう言って、徳井さんは微笑した。
「ええと・・・あの、そうですね。・・・いつの間にか、そうなってまして」
私はいつもの通りにクリちゃんの頭を撫でている。朝の9時半、いつもの公園で、私の日課になっているゴミ拾いの最中で。
夏の間、私の身辺はえらく変わってしまったので、ゴミ拾いに中々行けなかった。
イメチェンもだし、千草のパーティーもだし、龍さんとのデートや旅行もだし。
あの旅行の後に、家に帰ってから興奮のせいか、私はやっぱり熱を出してしまったのだった。それで数日は潰れてしまったのもある。
何やかんやで忙しい午前中が多くて、家の前の大きな公園のゴミ拾いにはこれないことが多かったのだ。久しぶりだと張り切ってやってきた今日、スタートしてから半時間ほどで、阿達さん、と彼に呼び止められたのだった。
徳井さんは、毎日阿達さんに会うのを期待して散歩に来てました、と言った。
会ってすぐ、お久しぶりです、と挨拶した後に。
え?そう言って私は動きが止まってしまった。何かの冗談か、それとも徳井さんらしくはないけれど軽い挨拶なのかと思ったのだ。
だけど彼の眼鏡の奥の瞳は真剣で、足元で跳ねるクリちゃんが場違いに思えるほどに真っ直ぐに立っていた。徳井さんの緊張が私にまでうつったようで、私も思わず姿勢を正してしまったのだった。
・・・これは、好意を伝えられた・・・の、よね?そう自分の中で確認して、それからやっと困惑した。