3つのR
私はまさかこの静かな雰囲気の人がそんなにしっかりと行動に出るとは思ってなかったので驚いて―――――――龍さんの言いつけを思い出したのだ。
『今度あの野郎にご飯に誘われたら、私は彼氏がいるのでって断ること!』
龍さんは姉の前で、私にそう厳命していた。もし約束破ったら、俺、あらゆることして仕返しを企むよ?そう言ってひどく恐ろしい笑顔をしてみせて。
現実的、かつ、他人事の姉が、はーいと右手を挙げてそこで彼に問いかけた。ねえ右田君、それって潤子に仕返し?それとも潤子を誘った男の人に?って。
龍さんは皮肉な笑顔に変えて、姉の方を向き直り、勿論、と続けた。
『野郎の方にですよ』
そんなわけで、私は理不尽な仕返し(?)とやらから、この爽やかな散歩人である徳井さんを守る為にも、何故か自分から彼氏います発言などという恥かしいことをしなければならない羽目になったのだった。
徳井さんは風に吹かれる木々の緑を眺めながらぽつりと言う。
「・・・夏の始め頃に初めてあの男性を見たときには違和感があったんです。この人が阿達さんと付き合うのだろうか?って。二人はあまりにもイメージが違ったし・・・雰囲気も、何と言うか、その、彼の方はもっとラフに思えまして」
すごーくよく判ります。私は思わず頷いてしまった。