3つのR


 ああ、そういえば。龍さんと出会った最初の頃、自転車に乗せてもらった時も最近トレーニングしてないとか言ってたし、旅行のペンションでも他の時でもイラっと来た時には「何か殴るもの」と目を半眼にしてアチコチ見ていた。そうか、彼は、ボクシングをする人なんだ~・・・。

 でも、そんな、私はどうしたら~!!

 マンガで言えば自分のバックに上から線が降りてきている所だ。私はガーンというショック音を自分でこしらえて背中に背負いながら、その場に突っ立つ。

 ・・・で、でも待ってるかも。とりあえず来たことだけは・・・・。

 そう思って携帯電話を開くと、タイミングよく電話がかかってきた。

「は、はい!」

 慌てて出ると、後ろに相当の騒音を流しながら大きな龍さんの声が聞こえた。

『ジュンコさん、今どこら辺?』

「あ、あの―――――――ついて、ます」

 私が何とかそう言うと、え?と龍さんが言って、すぐにジムのドアが大きく開く。

 そこに立つのは―――――――――喧嘩をしたあとのような、龍さん。汗だくで、髪から汗を滴らせながら電話を持って通りを見回した。

 そして私を見つける。

 彼は真面目な顔でじ~っくりと私の全身を見回した後、口元を上げてニッと笑うと、電話に話した。

『ちょっと待ってて。そこに行くから』

「あ、はい・・・」

 電話が切られて、龍さんがまたビルの中に消える。

 私は心臓をドキドキいわせながら立っていた。


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