3つのR


 生活がすこしずつ変わっていく。

 私は朝起きると龍さんを起こさないように部屋を出て支度をし、ゴミ拾いに行く。それから帰ってきて、二人分のブランチを作り、龍さんを起こす。

 彼はご飯を食べてから私と買い物に行ったりジムにトレーニングに行ったりして、それからお昼ご飯を作ってくれる。私は部屋で仕事をしていて、彼と一緒にランチを食べ、それから龍さんが仕事に出かける。

 夜まで一人で仕事をして、晩ご飯を食べ、私は先に休む。

 龍さんは日付を超えるころに帰ってきて、お風呂に入ったら同じベッドに入ってくる。たまに私が起きてお帰りを言うと、彼は嬉しそうに笑ってそのまま私を食べてしまうこともある。

 彼が、暗闇が苦手なことは、あの旅行で判っていた。

 だから私はいつも明りを消さないようにしたし、家の中に夜つけるための小さなランプを買ったりした。

 それはあのペンションで見たガラス細工に似た手作りのランプで、自分がサイトで販売している時に出来た知り合いの女性アーティストの作品だった。

 濃淡で色が変化する片手ほどのガラスランプ。それが夜の廊下や居間や寝室でぼうっと光るのは、何か秘密の通路を見つけたかのような不思議な感覚があって、私は小さな喜びを感じていた。

「ジュンコさんがいるって判ってるから、もうそんなに怖くねーよ」

 私がたくさんのガラスランプを家中にばら撒いたので、彼はそう言って笑った。

 今日は居酒屋の「山神」が休みの日で、龍さんが晩ご飯を作ってくれたから一緒に食べていたのだ。


< 238 / 258 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop