3つのR


 ゴージャスな洋食を15分くらいで手早く作ってしまって、彼は平然と前に座る。

 何度見てもその素晴らしい手さばきが覚えられなくて、私は無駄に凹むのをやめるためにキッチンに一緒に入るのはやめていた。

「・・・そお?でもあのランプ、小さくて可愛いからつけててもいい?」

 私がフォークを止めてそう聞くと、間接照明の柔らかい光の中で、龍さんが勿論と笑った。

 そのタレ目が優しく細められて目尻に皺がよる瞬間が、ものすごく好きだなあ~・・・。私はそれが見たいがために、彼が微笑む瞬間をじっと見てしまう。

 なんと贅沢な瞬間だろうか、そう思うのだ。

「私も子供の頃は家の中の闇って怖かったけど・・・今はそんなでもないかなあ~」

 そう気軽に言ったのは、弾みだ。別に龍さんのことが聞きたかったとかではなくて、ただの世間話。だけど彼はそうは思わなかったようだった。

 チラリと私を見て、そのままガツガツとご飯を食べる。大方終わったところで、急に話し出した。

「俺の子供時代、話、聞きたい、ジュンコさん?」

「え?」

 まだ半分も食べてなかった私は、驚いて顔を上げる。

「・・・ええと・・・。あの、どっちでもいいけど・・・別に無理しなくていいよ?」

 嫌がることを無理強いはしたくない。私が困った顔でそう言うと、彼は残りのご飯を食べてからお茶を飲み干して言った。


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