3つのR
「うーん、でも聞いて欲しいかも。こんなに近づいた彼女は初めてだし・・・俺も、話せるかも」
そして龍さんは真面目な顔で言う。
食べ終わったら、聞いて、って。だから私は頷いた。
食後のコーヒーを入れて、ソファーで彼と座る。だけど龍さんはしばらく目を閉じていて、無言でいた。
私は最初は邪魔しないようにって思っていて、それからはもしかして彼は寝てしまった?と思った。だからそっと立ち上がったのだ。彼にブランケットをかけて、自分は仕事をしようと思ったんだった。
弱くて酷い過去、自分の記憶をそういう風に表現した龍さんに無理はさせたくなかった。
ブラックな記憶は時に人を侵食する。
それから立ち直ったと言った、ならばそれでもういいんじゃないかな、私はそう思ったんだった。
過去の龍さんが好きになったんじゃない。私は、現在の彼が―――――――――――
だけど、立ち上がりかけた私の手をパシッと彼の手が掴んだ。
「大丈夫。もう話せるから」
彼は目を開けていた。どこかぼんやりした表情で、唐突に話し出した。
「俺の父親は、外見がいいだけのロクデナシで暴力野郎だった」
私は目を見開く。驚いたのだ。いきなり、お父さんへの暴言から始まったから。だけど、彼の手に導かれるままソファーに座りなおした。
私が座って顔を向けたのを確認して、彼はそっと手を離す。それから視線を台所の方へと逃がして口を開いた。