3つのR
「・・・今で言う家庭内暴力で、母親は、俺が物心ついた時から父親に殴られたり蹴られたりしていた。俺と弟を庇って余計に父親を怒らせていたんだって、今なら判るけど、その時はただ怯えるばかりで判らなかったんだ。機嫌が悪くなると家族に怒りを向ける男だった。特に大した理由もなく蹴り上げられたことも何度かある」
だけど、母親を守りたかった。
それで反抗や口答えをすると遠慮なく殴られたし、屋根裏部屋に閉じ込められた。
外に出してくれたらまだマシだったかもしれない。だけど父親が散々殴ったあとで放り込むのはいつも屋根裏で、そこは真っ暗で埃だらけだった。
話す龍さんの眉間に皺が寄った。その頃を思い出しているのか、顔を歪めてぼそぼそと喋る。そこにはいつもの明るい彼の姿はなくて、私は驚いたままでとにかくと耳を傾ける。
正直に言えば、耳をそむけたくなった。私は知らない暗い世界で、それは小さな子供が経験するにはあまりにも過酷だった。だけど、ここで耳を塞ぐわけにはいかない――――――――――
「だけどある日、俺には運命の出会いってやつがあった。小学生の5年生の時、家に帰りたくなくて裏通りをウロウロしていた。そこで喧嘩する大人にあったんだ。多勢に無勢だったのに、その人はあっさりと喧嘩に勝った。それで、驚いて動けない俺に気がついて言ったんだ」
見てたのか、お前?・・・坊主、これは内緒だぜ。バレたら俺、リングに上がれなくなる。
意味が判らなくてその場で聞いた。誰にバレたらダメなのって。それから、僕にもそれ、教えてくれない?って。
その人はしばらく俺を見ていてそれから聞いた。