3つのR
誰に勝ちたいんだ?って。
俺は先生にも話したことがなかったのに、その人には話す気になった。だから言ったんだ。お父さんを、殺したいんだ・・・
龍さんはパチっと目を開いた。ゆっくりと首を回して私を見る。私は心臓をドキドキさせながら、彼を見返した。
「だけど」
龍さんは言った。
「その人は、殺すのは感心しないなって言ったんだ」
それから俺に缶ジュースを買ってくれて、話は詳しく聞いてくれた。そして真剣な顔で俺に言った。これは、ボクシングだ。合法的に誰かと戦って相手を倒す競技だ。俺はお前に教えてやれる。だけど、これをするなら約束してもらわなきゃならない。
「・・・約束」
黙ってようと思ったのに、気がついたら私は言葉を出してしまっていた。ハッとして口を手で押さえたけれど、彼は気にしなかったようだった。ただ、頷いて続きを話す。
「そう、約束。・・・これを喧嘩に使っちゃいけない、それだけは守れって」
母親と弟、それから自分の身を守る為なら仕方ない。だけど、他のヤツに、自分から仕掛けちゃダメだって。それだけは守れるか?そう言った。
だから俺は頷いた。約束するって言った。お金は働いて絶対に返すから、教えてくれと。その人は笑って、坊主から金なんかとらねーよって言った。