3つのR
それで約束したんだ。
次に父親に暴力を働かれたら、必ず学校に言うこと。それから、父親に自分から手を出してはいけない。逃げることも大事だって。耐えられないなら母親と弟を連れて警察へ駆け込めと。それも勇気だって、真剣な顔で言ってた。
「それから毎日放課後はトレーニングしたんだ。強くなって、母親と弟を守りたい。それに自分を好きになりたいってずっと思っていた」
弱い自分はもうごめんだ。泣くばかりが自分じゃないはず。そう思って、がむしゃらだった・・・
龍さんが顔を巡らせて私を見た。それは優しい顔で、口元だけでちょっと笑っていた。
「それで・・・ちゃんと強くなれたよ。高校生の頃には、俺は腕でも迫力でも誰にも負けなくなっていた」
私は唾を飲み込んだ。聞いている内に緊張してしまって、喉がカラカラだったのだ。手を伸ばして彼の手を握る。その手は暖かくて、いつもの龍さんのそれだった。
「お母さん達も、守れたの?」
出した声は掠れていた。だけどその時の私は最悪のことを想像していたのだ。もしかして、龍さんから家族の話を聞かないのは、聞いたことがないのは、もしかして・・・。そう思って怖くなったのだ。
龍さんが苦笑する。ふっと口元を歪めて、それから低い声で言った。
「父親は本当にバカだから、勝手に自滅したよ。俺が中学生の時だ」
「え?」
私は首を傾げる。・・・自滅?それってどういうこと?そう思って。
「酒に酔って通りで喧嘩したらしい。その時に殴った相手は学生で、かなりの重症を負った。それで父親は刑務所行き」
彼は苦々しげにそう言って、ふんと鼻で嗤う。