3つのR


「懲りずにその中でも喧嘩して、打ち所が悪くて死んだと聞いた。俺と弟の体が大きくなるにつれて、父親の暴力は母親に向くことは少なくなっていた。俺はボクシングで腕っぷしを鍛えたし、弟は勉強を頑張って頭の方を鍛えた。バカ親父は俺達には敵わない。それで、父親が死んで終わりだ。俺達は本当の意味で自由になって、母親は職場で見つけた新しい男と再婚した」

 私はホッと肩の力を抜いた。

「・・・お母さん、幸せになったのね」

 龍さんは目を閉じて頷いた。

「相手の男は年上で、穏やかな性格で、初婚。子供はもう生まれなかったから、母親について行った弟が子供として籍も入れたしよくしてもらっているらしい。俺は高校の時から一人で暮らし始めて、ボクシングを教えてくれたその人にひっついていた」

 龍さんが、この話を始めてからやっといつもの笑顔を見せた。

「その人も料理を作る人だった。手先が器用だからと勧められて、俺は料理の専門へ進んだ。ボクシングでも優秀だったから、誘われたんだ。プロを目指さないかって。だけど―――――――――壊すか作るか・・・それなら、作るほうにしようかって思った」

 彼はにっこりと笑って言った。それに、優秀と偉大はやっぱり違うよなって。プロになれるやつは、優秀なんでなくて偉大なんだって。

 彼はついと手を伸ばす。そして柔らかく私の頬に手を当てた。

「・・・屋根裏に放り込まれた、その頃を思い出すんだ。だから、未だに暗闇は苦手。一人で暮らしてる時はずっと電気はつけっぱなしだった。だけど、もう、あんたと住んでる。だから大丈夫だ」



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