3つのR


 小さい龍さんは痛む体を丸めて屋根裏に転がっていた。

 痛みや父親、そして暗闇の恐怖から逃れる為に、泣きながら蹲って震えていた。

 父親が酔っ払って寝て、お母さんが助けてくれるまで、いつでもそうしていた―――――――――――


 ・・・ああ。

 私は手伸ばし、彼の顔を引き寄せる。体から力を抜いて、龍さんは私にされるがままになっていた。引き寄せた頭を抱きしめて、私は頬をすりよせる。

 彼の悲しい過去の話。だけど、それを自分で乗り越えるべく、この人はすごく努力したんだ。

 私が今までそれほど頑張ったことがあっただろうか。

 弱い体と心を抱えていた。だけど、私の周りはいつも温かい人ばかりだった。この人の気持ちは、私には一生理解出来ないに違いない。

 だけどとにかく、二人が今一緒にいるならば。

 この人には、笑って欲しい。

 私がその助けになるならば、喜んで、苦しみだって受けて立とう。

 そう思った。

 こんなに強い気持ちで何かを願ったことはなかったかもしれない。

 私の胸に抱かれて、龍さんが口を開く。

「―――――――俺はね、彼女にはいつも振られてきた。何だか真剣じゃないみたい、こんなのは恋じゃない、そんなことを女の子たちに言われてきたんだ。・・・それはある意味当たってる。嫌われないような、適当に当たりのいい態度しかしてこなかったって、今は判るんだ」


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