3つのR
彼の手が抱きしめる私の手を引っ張る。龍さんは頭を上げて、至近距離で私を見上げた。
「だけどジュンコさんには、イライラする」
彼のタレ目に私がうつる。ただじっと見詰めたままで、龍さんが話すのを聞いていた。
「ジュンコさんには腹が立つし、何でなんだって思う。泣かせたいと本気で思うし、でもやっぱり笑顔がいいとも思う。毎回忙しくて、ハラハラして、会えない時に思い出して苦しくなったりとか、する」
ガーン・・・と私の頭の中ではマンガみたいな効果音が鳴り響いた。
・・・イ、イライラ、するんだ、やっぱり。忙しいのもハラハラするのも苦しいのも、何だかそれって全然いい恋人ではないのでは?少なからずショックをうけながら、私はそんな事を考えた。
龍さんは私の胸元から見上げながら続けて言った。
「どうしようもないって判ってるけど、俺はあんたの別れたダンナに嫉妬してる。俺がジュンコさんの、初めての男になりたかった。何であんたはバツ1なんだって、それもまたムカついたりして」
「す、すみません・・・」
謝ったってどうしようもないけれど、居た堪れなくて私はとりあえずぼそぼそと謝罪を口にした。
龍さんは何だかやたらと色気のある切ない表情になって、じいっと見詰めてくる。うわ・・・くらくらする、そう思ったら、低い声がまた聞こえた。
「今までねえよ、こんな状態、自分でも笑うくらいだ。俺は、あんたが本当に好きなんだよ」
ぐっと胸にきた。危うく涙ぐみそうになったくらいに。だけどだけど、その前にかなり気になることも言ったわよ、この人・・・。