3つのR


 龍さんは、私に子供時代を話したことで何かつき物が落ちたみたいに前よりお喋りになった。

 といっても主に話すことが増えたのは自分の過去や家族のことに関してだけど。

 昨日の朝食の時なんか、朝日にキラリと光るいつものピアスを私が綺麗だねと褒めると、ぶっ飛ぶようなことを言ったのだ。

「あ、これはあれだよ。元々俺の趣味なんじゃなくて、父親に耳に根性焼きいれられた跡を消すためにしてんだよ」

 って。

 私はぽかーんとしてコーヒーカップをもったままで固まった。

「・・・根性焼き?」

 そう聞き返すと、彼は不思議そうな顔をする。

「あら、知らねーの、ジュンコさん?タバコの火がついたままで、こうじゅう~っと・・・」

「うぎゃあああああ~っ」

 痛い想像をして私は顔を顰める。そ、それを耳朶にされたってことなの~!?もう、本当になんてことを、龍さんの父親って!私はううっと呻いて彼の耳を見詰める。

「小4の時ね、あれはマジで痛かった。やっぱり目立つから中学の時に穴開けて誤魔化そうとして、だけどそれよりも焦げ跡の方が大きくてさ。仕方ないから太い輪を入れて、一つじゃゲイみたいだからついでにって3つにしたわけ。でもやってみたら気に入ったんだよ。俺、似合ってるっしょ?」

 にーっこり。私はその笑顔を見て、仕方なく微笑みを作る。・・・はい、大変よく似合ってます。


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