3つのR
マンガをめくっていた彼の手が止まった。
私がじい~っと見ていると、彼はチラリと紙面から目を上げて私を見た。それからノロノロと口を開く。
「・・・・嫌だから」
え、嫌なの?私は一瞬ショックを受けて凹む。・・・わ、私がいったら嫌なんだあああ~・・・。
曇った顔を見たらしい、彼が、あああ~と叫んで、わしゃわしゃと髪に手を突っ込んでかき回した。
「いや、違う。嫌なのはジュンコさんが来ることなんじゃなくて、あんたが来たら虎が喜んで色々言うだろうってことなんだよ」
「・・・店長さん?どうして店長さんが私に何か言うの?」
判らなくて首を捻る。すると彼はぶつぶつと口の中で何かをいったあと、言いにくそ~に説明した。
「うちの虎は、史上最強の苛めっ子なんだ。去年いたバイトの大学生、シカを彼女にして、その子が就職でやめてしまってから、弄れるキャラが店から居なくなった。シカの後に春から新しくきた女の子は沈着冷静で反応がちっとも面白くないんだよ。そんなところにジュンコさんが行ったら・・・」
ああ・・・。そう言って龍さんはガックリと額を床につける。
私は首を傾げたままで聞く。
「ええと・・・私、からかわれるってこと?そんなに面白い反応できないと思うけど・・・」
顔を上げた龍さんが苦笑する。ジュンコさん、自覚ないよね~って言いながら。
「シカは、からかうと怒ったり挙動不審になったりして面白かった。ジュンコさんは傷付いて泣きそうになる。そのうるっとした目が、絶対虎のツボに入ると思うんだよな~」