3つのR


 な、泣かされるのか!私は想像して恐れおののいた。色々話ばかり聞いている噂の店長さんは、私の中ではすでにモンスター化している。そこに更に泣くまで苛められるという情報まで追加されたわけだ。

 龍さんがチッチ、と指を振る。

「ジュンコさんをからかっていいのは俺だけだよ~。ダメダメ、虎の毒牙なんかにかかったら、あんた再起不能になっちゃうかもしんねーし」

「・・・・あの、じゃあ・・・やめときます」

 私は机に向き直ってそう言ったんだった。

 龍さんは大きく頷いて、マンガに戻る。そんなわけで、結局私は一度も居酒屋「山神」へはいけてないのだった。

 だから仕方なく、私は心の中で手を合わせる。

 「山神様」、龍さんを、どうかよろしくお願いしますって。




 晴天の秋の空を振り仰いだ。

 10月も終わりかけの土曜日のお昼前。

 龍さんと一緒に、いつもの川原を散歩しようという話になって、ついでにゴミ袋も持参して歩いていた。


 大きな国道で、この道は川沿いの3つの町を通っている。まだ知らない近くて遠いその街のことを想像すらしたことはないけれど、ここの交差点に立つたびにこの道は色んなところに繋がっているんだよねえ、と思うのだ。

「ジュンコさん、ほら、信号が変わるよ~」

 龍さんが青信号を渡りかけながら私を呼ぶ。


< 253 / 258 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop