3つのR
・・・ああ、あなた、今幸せなんだね。
私の瞳が潤みだした。
交差点を渡りきったところで動かなくなった私を、先に進んでいた龍さんが振り返ってみる。
「おーい、ジュンコさん?どうした~?」
「・・・ううん、何でもない」
ちょっと風で、目に埃がね、そう言って、私は彼に向かって歩き出す。
実家に寄り付かなくなったと聞いていた彼が、実家の酒屋のトラックに乗っていた。それも休日に。それは素晴らしいことだとすぐに判った。
・・・あの女性が鎹(かすがい)になって、彼は、実家に戻ったのかも・・・。そうなのかも。休日に、彼が保険の営業に出ずに実家の手伝いをしているのだとしたら―――――――――
「・・・ほんと、良かった」
思わず呟きが声に出てしまった。
先を歩く龍さんが振り返る。
「何か言った?」
私は笑顔で首を振った。そして足を速めて彼に近づいた。手を伸ばして―――――――龍さんの腕に自分の手を絡める。
「・・・お?ジュンコさんにしては積極的」
龍さんがからかうように瞳を細める。