3つのR

 どっちもが悪かったし、どっちもが悪くない別れだった。結局のところ、私と彼は合わなかったのだろう。一緒にいると関係を悪くさせてしまう縁があるとなれば、それがあの頃の私達だったのだ。

 別れてしばらくして、彼が過労で倒れたと共通の友達に聞いた。

 私を一人で放置していたと自分を責め、少しでも多くお金を渡そうとして、働きすぎたらしい。

 彼らしくて、私は少し笑ってから泣いた。彼の、無理が見なくても判って痛かったのだ。ああ、バカな人なんだからって一人で呟いて。

 もう気持ちも手も届けることは出来ないけれど、幸せになってほしいのに、そう思っていた。

 多分、お互いにそう思ってた。

 ちょっとした親切が人を殺すこともある、そう知ったのは2年間の結婚生活だったわけだ。強烈な幸せなどなかった。だけど確かに彼のことは好きだったのだ。一緒の生活に憧れて、結局のところそれは思っていたのと大きく違う模様を描いて散り散りになり、毎日の中に消えてしまった。彼には私は必要なかった、それが判ってしまって苦しくて、自分から逃げた日常なのだ。

 仕事が大好きで、朝から晩まで働いていた夫。体の弱い私を自分の力で何の苦労もない暮らをさせてあげたいと、ニコニコ笑って出掛けていった。

 そんなにお金はいらないから、一緒にいて、とは言えなかったのだ。

 二人で働いていて財産を築けない、私は無理をすれば直ぐに倒れるし、定期的に病院代までかかってしまう。


< 3 / 258 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop