3つのR
これは、結婚を決めた時に彼とのデートで着ていた服。お気に入りのワンピースで、彼はそれを着ると顔中の笑顔を見せてくれたものだった、とか、これは両家の顔合わせの時に着たんだった、それであちらのご両親が褒めてくれて・・・それとか新婚旅行で買った・・・。
思わず呆然としてしまった。
ああ・・・何てこと。そう改めて思ったのだ。気がつかなかっただけで、私、未だにこんなに過去に包まれて生きていたんだわって。
そんなつもりはなかった。だけど、いざ捨てようと思うと出てくる元夫との思い出の数々。5年も経っていて、こんな事になろうとは思っても見なかった。
数時間は使ってしまった。それでも私はまた手を動かす。口の中で、ひたすらおまじないみたいに繰り返していた、reduce、reduce、reduce!ああ、もう!私は次に行きたいのよって。
「・・・ちょっとお、潤ちゃん?あなた一体何するつもり?年末の大掃除は年末にするもんよ」
ご飯ですよ~と声を出しながら呼びに来た姉が、ぎょっとしたように入口で立ちすくんでそう聞いた。
一心不乱に捨てるという行為に没頭していた私は、ぼさぼさの髪を振り払って簡単に答える。
「黙って。これが必要らしいのよ、私」
「・・・はい?何?」