3つのR
ふふん、そう笑ってから、姉は私の後を歩きながら言った。
「その男、いい男だったの?」
「え?」
一瞬意味が判らなくて、廊下を歩きながら私は振り返る。姉はニヤニヤと笑ったままで言い直した。
「だから、その耳がルーズリーフの男の人よ。ちょっと話しただけの人の提案を受け入れるなんて、潤子らしくないなあと思ったのよ。我が妹はそーんなに積極的ではなかったはず。だから、よっぽど記憶に残る男性だったのかなあ~って。イケメンなの、その人?」
彼の言葉に従おうと思ったのはきっとただ単にタイミングの問題だと思う、と心の中で呟いて、姉には何てことないって感じで言葉を返した。
「・・・ああ、そうねえ・・・一般的に見て、イケメンと呼ばれるんじゃないかなあ。ちょっと軽そうだったけど。女性を褒めなれてるようだったし、茶髪も長めで、ピアスも・・・派手、というか目立つ。喧嘩が原因で病院にきてたしねえ」
ふーん、と聞こえた。色々想像しているようで、姉は天井を睨みながら次々に質問をしてくる。
「背は?」
「高い」
「孝太君くらいに?」
姉はかなり身長が高かった私の元夫を出してきた。うーん?と考えてから、気がついた。あら、私、ちゃんと立ってあの男の人を見てなかったんだわ。こっちが座ってるか、あっちが座ってるか、だった。・・・でも。