3つのR


 ・・・ダメだ、こりゃ。どうぞ、いくらでも勝手に泣いてちょーだい。

 挨拶をして、ご飯を勝手に始めてやった。

 幼稚園からずっと女子校に通いひたすら女の園で生きてきて、男性ともまともに喋れなかった過去がある姉には言われたくないぞ!あんたなら彼の連絡先をキチンと聞いたのか?そう突っ込みたいけど止めておいた。少なくとも私は彼の名前は知っている。それって凄いことだと思うし。

 だけど、それは姉には内緒なのだ。

 もう出会わないだろうって思っていた。だから彼がくれた人生のヒントだけを黙々と実行して、私はまた自分の生活を楽しめるようになるんだってそればかりを考えていた。

 朔君が指導してくれたお陰で、ネットでのアクセサリー販売は結構うまく行きだしていたのだ。

 だから私は個人的断舎利を実行しながら販売業にも懸命に頭を使い、何とか熱を出さずにバランスを保って冬を過ごしていた。

 前半は結構寒くて雪もたくさん降ったのに、冬の後半はそれほどでもなく日々が過ぎていく。

 世間様は、受験や確定申告や卒業やって忙しい時期だっただろう。

 私も私で、何とか自分でやらなくちゃならないことをして、過ごしていた。

 過去にまつわるものをどんどん処分して行って、私の部屋はかなりすっきりとしていた。だから今までなかった作業台を、空っぽになった押入れを書斎に改造して作り、材料や製作スペースを確保した。


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