3つのR
家から近い川原の土手をゆっくりと歩いて病院へ向かう。
reduceを実行しまくったせいで極端に少なくなったワードローブの中から、今日はお気に入りの一枚ワンピースを着ていた。それは実家に戻ってから一度気晴らしにショッピングに出かけた際に買ったものだから、今回の作業には関係のないものだった。その上に明るい色のカーディガン。そうして風と光を浴びながら水辺を歩いていると、余りにも平和な気分で心が底からほんわかする。
確かに冬は終わった。そして、私は違う自分になろうとしている途中。
知らぬ間に浮かんだ微笑をそのままにして、私は自分の主治医がいる病院までゆっくりと進んだ。
「ああ、潤子ちゃん。顔色がいいね、それに・・・ちょっと雰囲気が変わったようだね」
村上先生は振り返って最初にそう言った。
私は診察用の椅子の上でニコニコと笑う。
「はい、この冬に思い切って、色んなものを捨てたんです。これからちょっとずつ新しい気に入ったものを買っていこうと思ってて、最近は気分もスッキリしてます」
「そうか、そういう時は確かにあるね。思い切りが必要だが、いいことだと思うよ。さあ腕を出して」
いつもの確認を一通りして、先生はうんと頷いた。
「体もいい調子だね。このまま、無理をせずに、熱を出さずに夏まで持っていけるのを期待してるよ」
「はーい」
「ゆっくりだよ、ゆっくり。君は僕にしてみたら、まだ子供ほどの若さがあるのだから」