3つのR
親のように諭すとき、先生の瞳にはいつもやんちゃな光がともる。小さい頃から見てきたそれを今日も私はしっかりと見て、嬉しくなる。
安心してホッとするのだ。
「ありがとうございました。先生、また」
「うん。春先は体調不良になって当たり前なんだから、気をつけるようにね」
「先生もですよ」
「はいはい」
いつものように、先生は肉厚の手をゆっくりと振って見せる。私はぺこんとお辞儀をして部屋を出た。
ざわつく病院を会計カウンターまで真っ直ぐに進む。今日も病院は混んでいるようで、名前を呼ばれるまで待合室の椅子に座って待っていた。
大きなテレビの中はワイドショー。レポーターが甲高い声で都心で起こった放火事件について話をしている。私はそれを見るともなしにぼーっと眺めていた。
その時、目の前を通りかかった大きな影が、あ、と声を出した。
何気なく、ヒョイと見上げると、そこには垂れ目の笑顔とあの目立つ青いピアスが―――――――いやいや、ピアスをつけた男性が立っていた。
「あら」
つい声を零す。