3つのR
だから出来るだけワガママは言わないようにしようとしていた。行ってらっしゃいと手を振って笑う。それからドアを閉めて泣いていた。けれどもそうしたのは私だ。
夫と話したりせずに、勝手にそうしたのは私なのだ。
だから責めるわけにいかないのだ、本当は。
長く責める言葉だけを書いたあの手紙。置手紙をして家を出た、過去の日の私を平手打ちしたい。だけど勿論そんなことは出来ないから、私は仕方なく前を向く。
昔から体が弱かった。だけど、この体で生きていくしかないのだからって。
とりあえず実家を出よう、そう決めてから、だけどそれすらも難しかったのだ。計画の時から疲れると高熱がでて寝込んでしまう。
見かねた姉が、都会からこっちに戻ってきた。それで、ちょっとした郊外の住みやすい町に、姉と二人で住むことになったのだ。
「いいのよ、私はちょうど独立を考えていたところなんだから」
姉はそう言って笑うけれど、私に対する心配がありありと見てとれた。でも甘えることにしたのだ。まだ、両親といるよりは心がやすらぐはずだ。この世で一番近い遺伝子の人間である姉と、私は人生を前に進ませようと決意した。
その際に、家賃は半分にするって意見を通す必要があった。自立、それが一番私の求めるものだったのだから。
養われるのが夫から父に、そして姉に代わっただけって状態は嫌だったのだ。だから、できることをしてお金を稼ぐから、私にも家賃を払わせて。そう頼み込んでやっと実現したこの生活が、3年目に入っている。
私は、もう33歳になっていた。