3つのR
今日の彼は前の黒いTシャツとボロボロジーンズ姿ではなく、白いロンTにエナメルのような光を放つ黒いスタジャンを着て、長めの髪を後で無造作に縛っている。ラフで小奇麗な都会の男性って外見だった。
私が彼の全身をざっと見たのと同じことをあっちもしていたらしい。口元をひゅっと引き上げて、タレ目を細めて彼が言った。
「んーと、あ、そうだ。ジュンコさん、だ。奇遇だね~、出会いがいつも病院てのがちょっと何だかなーだけれども」
私は思わず人差し指を彼に向けながら言う。
「こんにちは。ルーズリーフの・・・」
「じゃなくて、名前は龍治ね。そのルーズリーフから離れてくれないかな~」
彼は苦笑して、私の突きだした人差し指に自分の人差し指の先端とトンと引っ付ける。おお、E.T.―――――――とか言いたくなるのはこの世代の悲しきクセだわ。
私は慌ててパッと指を回収して、頭を下げる。
「ごめんなさい。でもその耳が。一度思い込んでしまったので訂正が」
「耳がね~」
苦笑した顔は、確かに見覚えのあるあの男性だった。わあ、本当に奇遇だ~!私はちょっと興奮して改めてそう思う。
大きな病院だし、私みたいに定期的に使っている人ではない、健康な男性だ。だからもう2度と会うことはないって思っていた人が、何の偶然か目の前に立っている。