3つのR
「!!」
「おお、固まった~。あはははは」
彼は実に嬉しそうに大きな声でゲラゲラと笑った。道行く人が振り返るほどに。・・・あああ、恥かしい。私は顔が熱くなるのを感じながら、ぼそっと言った。
「・・・いえ、お店の方がいいです」
まだククク・・・と口の中で笑ったままで彼が頷く。
「そうでしょ。で、何が食べたい?和食洋食、どっちする?」
「ええと」
「どっち?今選んで。ほら、早く早く早く!」
「あ、あ―――――」
「選べーっ!!」
「よ、洋食です!」
迫力に恐れをなして、私はつい叫ぶ。
はいよ、彼はそう言ってまた笑った。
茶色の髪の毛を光に輝かせながら、スタスタと歩いていく。私は冷や汗が垂れるのを感じながら、大きくなった鼓動を抑えようと必死になっていた。・・・大きな声、聞いたのも出したのも久しぶりだ。でもそっか、短気だって自分でも言ってたっけ、この人・・・。
だけど、初対面といってもいい人を職場に連れて行って大丈夫なんだろうか。それにそれに、ついていって大丈夫なの、私!?一応姉に連絡いれといたほうがいいのかな。いや、でもそれって失礼かもしれないし―――――――
考えまでこんがらがって、何が何だかわけが判らない。彼は平然と私を連れてその長い足をゆっくりと動かしていく。
目指しているのは商店街のようだ、と気付いたのは結構経ってからだった。
「ここ。ようこそ山神へ」
彼がこちらを振り向いて笑った。