3つのR
「・・・いいんですか、私が入って」
そう聞くと、カウンターの中で何かをし始めている彼がチラリとこっちを見た。
「大丈夫だよ。俺、実はよくやるんだ。友達とか来た時に、料理作るためにここを借りる。俺の部屋の台所は電気ヒーターが一つしかないから、料理には向かねーの」
はあ、そうなんですね。私は手でガラガラとドアを閉めにかかる。するとカウンターから声が飛んできた。
「あ、開けといて。半分くらいでいいから。空気の入れ替えもしたいし――――――ジュンコさん、その方が安心でしょ」
緊張を見透かされた気がしてぐっと詰まる。だけど表情はバレてないはずだわ、そう思って、言われた通りに半分だけドアは開けてカウンターの席へ向かった。
「えーと・・・あの、右田さん」
「俺苗字で呼ばれ慣れてないんだよね~。龍って呼んで」
「え」
「ちなみに俺は31歳です。ジュンコさんがいくつか知らないけど、上でも下でも龍って呼んで~」
テキパキと動きながら、彼がそういったので正直に私は困った。名前で呼ぶの!?そ、そんな・・・出来るかしら、そんな高等技術。そう思って。
それに、31歳なんだ。その自由な雰囲気と可愛らしい言動からもうちょっと下かと思っていた。まあ、少なくとも私よりは年下なわけだけれど。