3つのR


 彼がそのまま無言になったので、私がうんと言うのを待っているのだとようやく気がついた。ので、とりあえず返事はすることにする。

「わ、私の方が2歳上です。でも、あのー・・・ええと、はい、判りました」

 俯いて料理をしているらしい彼の口元がひゅっと緩んだ。あ、また笑ってる・・・本当この人はよく笑うなあ。ちょっとばかり煩くなった鼓動を無視して、固い木の椅子を引き出した。

「・・・首にならなかったんですね」

 そういえば。去年の秋に喧嘩して病院に来ていた彼は、首になるかも~って言っていたはずだ。だけど、確か勤めている店の名前はここのようだったと思う。

 私の質問に、そうそうと簡単に頷いた。

「店長は首にしたかったみたいだけどね~、オーナーが大目に見てくれたから助かったんだ。オーナー様様だよ、ほんと」

「良かったですね。店長さんには何もされなかったですか?」

 何だかかなり怖い店長だって言ってたはず。でもさっきの電話では仲良さげだったけどなぁ。私がそう言うと、何がおかしいのか彼はくっくと口の中で笑った。

「うん、嫌味攻撃と弁償だけで済んだ。殺されるかと思ってたけど、そうならなくてホント良かった~!」


< 50 / 258 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop