3つのR
卑怯だったな、と今では思う。
迎えにきた彼は謝るだけだった。一生懸命、頭を下げて、俺が悪かったって。寂しい思いをさせて、申し訳ないって。私は彼が言えば言うほどその謝罪が針のように自分に突き刺さるのを感じていたのだった。
違うの。あなたが悪いだけじゃあないの。頭を下げるのを止めて欲しかった。
私、私が、それでいいって思ってたからなんだよ――――――――――――
言いたいことを言わなかったのは、私だ。
それは事実としてそこにあった。彼は自分が変わるからやり直そうって言ってくれた。私はそれを受け入れる勇気がなくて、ただ首を振り続けた。
私に遠慮して好きなことが出来ない彼、その姿を見て、私は本当に幸せだろうか?そう思ったからだった。
だけど、龍さんには叱られちゃった・・・。
急に蘇った離婚当時の思い出に、鼓動がまた大きくなってしまった。
涙目になって前を睨む。
大丈夫、もう終わったことだもの。あの人はきっと今では前より幸せになってるはずよ。あの笑顔と愛嬌があれば、絶対大丈夫。
だから私も、自分の生活を充実させて楽しまなきゃ。
そのまま風に吹かれて座っていたら、後ろでききーっとブレーキ音がした。
え?と驚いて振り返る。すると自転車に乗って息を弾ませた龍さんの姿が視界に飛び込んできた。
「ええ?」