3つのR
ぎーこぎーこと盛大な音を立てながら、古い自転車は大人二人を乗せてゆっくりと進む。
途中で下校時間らしい小学生の団体に、頑張れ~!と応援までされてしまった。そりゃあ目立つだろうね、私は片手を彼らに振って笑い返す。
「大丈夫ですか、龍さん?」
「おう!」
返事はいいけど、彼は呼吸が乱れていた。私はまた笑ってしまう。やっぱりこのタイヤ空気ないんじゃないの、そう思って。
彼の腰に回した腕に感じる動きと体温。お尻は確かに痛かったけれどほっこりとした気持ちになって、私は目を閉じる。
・・・大人なのに・・・二人で自転車に乗って、壊れそうな自転車で家に帰っている。それは不思議だったし、何か可愛い匂いがした。
「ああ、クソ!!やっぱり自分の車、取にいきゃあ良かったか!」
龍さんが前でそう叫ぶから、私は怪訝な声で聞き返す。
「え、これって龍さんのじゃないの?」
はあ、はあ、と荒い息を吐きながら、彼は懸命に自転車をこぐ。その呼吸の合間に仰天することを言った。
「そう!そこ等辺にあったチャリ!」
「・・えええっ!?だ、誰かのなんですか!?盗ってきたんですかあああ~っ!?」