3つのR
龍さんは我が家で、コップに水を2杯飲み、そのあとで改めて姉の淹れてくれたコーヒーを飲んだ。
私が彼と喋りながら玄関を開けると、丁度部屋から出てきたばかりの姉とばったり会ったのだ。そして、姉はぎょっと目を見開いたままでフリーズした。
大きなターバンを巻いた頭からはぴょんぴょんと髪の毛が飛び出し、顔色は悪くて目の下のクマは朝より酷くなっていた。よれよれのシャツに部屋着のスウェット姿(多分、ノーブラ)。
「あ、どうも」
龍さんがぺこりと頭を下げるのと、姉が部屋に駆け込むのがほぼ同時だった。バタン!と勢いよく閉めたドアの向こう側で、彼女はぎゃあぎゃあと叫ぶ。
「潤子ったらああああ~!!お客さん連れてくるなら言っておいてよ!私今ヤマアラシみたいな格好じゃないの!」
「・・・あ、ごめん。でも急だったから」
姉は妹が客人を、しかも男性の、しかも格好いい人を連れてきたことで、恐慌をきたしたらしい。臆せずに静かに笑う龍さんを連れて私は居間へ行き、姉は身だしなみを一応整えてから二人に合流した。
「えーっと、こちら、右田龍治さん。私の姉です」
お互いに手を向けてそう紹介したあとで、頭を下げている姉に私は聞く。
「仕事終わったの、お姉ちゃん?ごめんね、早く戻ってきちゃって」
もうちょっと外で時間を潰して帰るつもりだったのだ。だけれど、こうなってしまって私は姉の邪魔ではないだろうか、そう思ったんだった。