3つのR


 さて・・・今日は、ガラスを溶かしてアクセサリーを作ってみようかな・・・。これからくる夏にむけて、何か涼し気なものを、と考えていて、ゴミ拾いの途中で拾った緑色のガラス瓶に魅せられたのだ。

 あんな色のガラスがピアスやイアリングになったら、可愛いかも―――――――――――

 目を閉じて想像してみる。ビーズもつけて・・・それから、薄い輪にしても可愛いかも。それとかそれとか・・・。溢れ出てくるアイディアを瞼の裏で必死になって追いかけていたら、あのー、と声が聞こえて目を開けた。

「え?」

 顔を上げて周囲を見渡すと、柴犬らしい子犬を連れた男性がベンチの横に立っている。

「大丈夫ですか?」

「え、はい?」

 私?周囲を見回したけれど他には人の姿はないし、この人は私を見ている・・・。ってことは、私に話しかけてるんだろうな。

 そう確認してから改めてその人を見る。

 淵の薄い眼鏡をかけた私よりも年上に見える男性だった。ロングのTシャツにスラックスというラフな格好で、黒髪は短い。眼鏡の中の瞳はじっと私を見ているようだった。

「あの・・・?」

 何て言われたかが判らなくて、私は首を捻る。すると彼はふ、と笑った。

「すみません。俯いていたので、どこか具合でも悪いのかと思ったんですが――――――――僕の勘違いのようですね」


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