時は誰も待ってくれない 上
あ、また熱くなる。
胸のあたりから顔全体にかけてじんわりと熱くなるこの感覚がくすぐったくて仕方ない。
「俺も真由って呼んでいい?」
家に着いて別れ際にそう言った優に静かに頷くと私の頭を撫でて帰った。
初めて男の人に名前で呼ばれたことにまだ胸がドキドキしている。
私はこの感覚を知っている。
でもそれを認めてしまっていいのかな。
認めてしまったらもう戻れない気がして怖い…。

全てあの街に置いてきた筈なのにいざとなると怖くて仕方ない。
そんな私でも優は受け止めてくれるだろうか。
私はこの夜確信した。
…私は優が好きだと。
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