時は誰も待ってくれない 上
でもやっぱり優の横顔はどこか嬉しそうでその横顔を見ていると私も笑顔になる。
「何笑ってんの?」
「なんでもないよ」
「真由そればっか」

車が静かに停車する。
「はい、着いたよ」
車を降りると微かに香る潮の匂い。
こんな夏でも涼しく感じる風。
「海だ…」
「夏だからね、いいかなって思って」
「今年初の海だよ!」
駆け出す私を困ったような笑顔で見る優。
夜の海は月に照らされてこんなにもキラキラして綺麗なのだと初めて知った。
< 115 / 186 >

この作品をシェア

pagetop