時は誰も待ってくれない 上
誰もいない静かな夜の海には二人の楽しそうな笑い声だけが響いていた。

「真由」
優しい優しい声で私を呼ぶその声。
「ん?」
私を抱きしめる力が少しだけ強くなる。
こうやって抱き締められていると胸の鼓動が聞こえてしまうんじゃないかと思う。
「好きだ。俺と付き合って欲しい」
抱き締めていた腕を離して私を真っ直ぐに見る瞳は真剣で冗談でもなんでもない。
いつだって優は優しくて真っ直ぐな人。
この人なら全てを委ねれる。
私を見てくれる。私も優が好き…。
さりげない優しさが、その真っ直ぐな瞳が大好き…。
「よろしくお願いします」
優はこれまでにないほど優しく微笑んでまた私を抱きしめる。
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