時は誰も待ってくれない 上
私はもう少しでこの優しい笑顔で見つめてくれる大切な人を自ら手放そうとしていた。
そんなつもりはなくても。
きっと私は優の優しさに甘え過ぎてたんだ…。
困ったように眉を少しだけ曲げて優しく笑うこの笑い方は優が照れているとき。嬉しい時。
それは私が見つけた癖で今も私の隣で嬉しそうに微笑んでいる。

あの時優が名前を呼んでいてくれなかったら一度に沢山の人を私は傷つけていた。
優にもう一度心からお礼を言う。
「ありがとう」
別の意味も込められてるなんて知らない優は前を向いたまま困ったように笑っていた。
純粋な優が好き。
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