時は誰も待ってくれない 上
とても懐かしく感じる声。
胸のあたりが暖かくなって私は思わず泣いた。

『悲しい…?』

ちがう。悲しいんじゃないよ。
なんでだろう…なぜか涙が溢れて止まらない。
何がこんなにも嬉しいのか分からない。
首を振ると私の頭に暖かい手を感じた。
『嬉しい』
見上げたくても逆光で眩しくて目を細めてしまう。
なぜかその人の顔は分からないけれど手はとても暖かくて心が落ち着く。
その安心感にまた涙が溢れて止まらなかった。
伝えなきゃいけないことがある。
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