時は誰も待ってくれない 上
聞いたことのある声に、懐かしい声に私の脈は異常に速くなる。
隼人…隼人…
「あの、ありがとうござ…」

中谷隼人。


振り返ってはダメと体が発しているのに私は振り向かずにはいられなかった。
私の顔を見て言葉を失う中谷。
昨日見た中谷にもう一度会えるなんて…。
やっぱり正面から見てもあの頃とは少しだけ変わっていた。体はやっぱり細くなっていて肌の色は白い。髪も昔の綺麗な黒髪ではなくて少しだけ茶色に染められていた。でも瞳だけは変わっていなかった。どこか寂しそうな瞳。
中谷も信じられないというような顔をして私を見つめると「高、橋…?」と呟いた。
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